胆嚢結石症・総胆管結石症について

病態・原因
肝臓でつくられた胆汁は胆管を通って肝臓から十二指腸へ流れる仕組みになっています。
胆嚢は、袋のような構造をし、そこから胆嚢管という管が出て、胆道に接続されています。
この胆道のうち、肝内にある部分を肝内肝管、肝から胆嚢管の接続部までを総肝管、接続部から十二指腸に至る胆道部分を総胆管と呼んでいます。



胆石は胆嚢や胆管内にできた結晶で、胆嚢にあるときは胆嚢結石症(胆石症)、胆管にあるときは総胆管結石症、肝臓内の胆管にあるときは肝内結石症といいます。我が国では胆嚢結石が最も多く約80%を占めます。胆嚢結石の60%はコレステロール胆石(コレステロールを70%以上含む結晶)ともいわれています。胆管結石ではカルシウム・ビリルビン結石(カルシウムとビリルビンの結晶)が主体です。

症状
腹痛:突然または前駆症状を経て、右季肋部や心窩部に激痛をきたします(疝痛発作)。
疼痛は胆嚢頚部、胆嚢管または乳頭括約筋の痙攣によって起こり、多くの場合これらの部位に胆石が嵌頓した場合に起こります。脂肪の過剰摂取、過食、過労、アルコールの過剰摂取などがその誘因と言われています。痛みは、通常10分程度で治ることもあれば、数時間持続することもあります。また上腹部のほかに、右肩や右腕、背中などに痛み(放散痛)が起こることもあります。

黄疸:結石または炎症による胆汁流出の障害によっておこります。特に胆嚢管や乳頭部付近で嵌頓すると、急性の胆道感染を引き起こすため、発熱も見られます。

その他の症状:悪心、嘔吐を伴うこともあります。嘔吐に際しては胆汁を混入することが多いです。無症状胆石(無症候性胆石);自覚症状をもたない胆石であり、多くが胆嚢結石の場合にみられ、総胆管結石では無症状結石のまま経過する例は少ないです。

診断
胆石の位置や種類、胆道の機能異常を発見するために、腹部エコー(超音波)検査、レントゲン(排泄性胆道造影)、CT検査、MRCP(磁気共鳴胆管膵管造影)などがあります。また内視鏡検査では、内視鏡的逆行性胆膵管造影法(Endoscopic retrograde cholangio pancreatography:ERCP)や経皮経肝胆管造影法等を行います。

ERCP:胆管の十二指腸への出口である十二指腸乳頭へ内視鏡下で造影チューブを挿入していき、先端から造影剤を注入して、胆嚢や胆管をX線撮影する検査です。結石の大きさや位置、胆管壁の異常などが観察できます。

治療
胆嚢結石症:無症状であれば特殊な例を除けば原則として経過観察します。有症状の場合は原則として手術します。まず、精密検査をしてから、胆嚢摘出術の適応があれば腹腔鏡下胆嚢摘出術が選ばれます(困難な場合には、開腹術になります)。
また胆嚢温存療法では、胆石溶解法(石灰化のない結石に対して)、体外衝撃破砕療法(ESWL)があります。

総胆管結石症:閉塞性黄疸、急性膵炎、胆管炎などの合併の頻度が多く、速やかに結石除去を行う必要があります。

内視鏡治療
(a) 内視鏡的乳頭括約筋切開術(Endoscopic sphincterotomy:EST)内視鏡下で十二指腸乳頭部にナイフ(電気メス)の付いたカテーテルを挿入していき、乳頭部を高周波を用いて切開し、総胆管結石を十二指腸内に排出させる方法です。合併症は出血、穿孔、膵炎などあります。
(b) 内視鏡的乳頭バルーン拡張術(Endoscopic papillary balloon dilatation:EPBD)乳頭部にガイドワイヤーを通し、それを用いてバルーンダイレーターを挿入し、バルーンに生理食塩水や造影剤などを注入して膨張させることで乳頭を拡張する方法です。乳頭部の機能は温存されます。
(C) 砕石・採石術:十二指腸乳頭より処置具を挿入し使用することにより、胆管結石を砕いたり、採ったり、また掻き出したりすることが可能です。