1.C型慢性肝炎とは
C型肝炎ウイルスは1989年に発見されたウイルスで、血液を介して感染します。このウイルスに持続感染した患者さんで、肝機能異常(血液検査でALTという数値が正常より高い)のある状態をC型慢性肝炎といいます。C型肝炎ウイルスに感染しているだけで、肝機能が正常の患者さんは、無症候性キャリアと呼ばれています。
2.感染経路
ウイルスが発見される以前は、ウイルスに汚染された血液および血液製剤からの感染、汚染された注射器からの感染、鍼治療などでの感染がありました。現在は献血時の検査や、使い捨て針の普及などにより、これら医療行為で感染することはまずありません。現在最も多いのは、覚せい剤使用時の汚染された針による感染で、他に稀ではありますが、性交渉、刺青、出産などで感染することもあります。
3.経過
現在C型肝炎ウイルスの感染者は、日本で150万人~200万人いるといわれており、その約25%が、肝機能正常の無症候性キャリアです。残りは肝機能異常のある慢性肝炎の患者さんです。無症候性キャリアの場合、病気が進行していくことは稀であり、治療も必要でない方がほとんどです。慢性肝炎の患者さんの場合、病気は徐々に進行し、一部は肝硬変となります。肝硬変になると、肝癌が発生する危険が高くなり、年間5~8%の患者さんに肝癌が認められます。
4.症状
慢性肝炎の状態では、ほとんどの患者さんには症状はありません。肝炎の炎症が強い場合や、肝硬変では、疲れやすい、食欲がでないなどの症状がでることがあります。肝硬変が進行すると、黄疸(体が黄色っぽくなる)、腹水(お腹に水がたまる)、体のむくみが出るなどの症状がでたり、意識障害(肝性脳症)が出ることもあります。
5.診断・検査
C型肝炎に感染しているかどうかは、まず血液検査を行い、C型肝炎ウイルスの抗体の有無を調べます。抗体が陽性なら、さらに血液中のウイルスのRNA(核酸と呼ばれるウイルスの一部)の存在を確認し、これが陽性なら、C型肝炎ウイルスに感染状態と判定します。次にウイルスの量と型を調べ、後に述べる治療方法の選択や、治療効果の予測に役立てます。
肝炎の進行具合を知るためには、血液中の血小板の数や、繊維化マーカーという物質を調べ、参考にします。さらに正確に肝炎の進行度を評価するために、肝臓の組織を直接採取する肝生検という検査をすることもあります。これらの検査も、治療方法の選択や、経過観察の必要度を判断するのに有用です。
6.治療
C型肝炎の完治をめざす治療法は、インターフェロン治療が主体となります。
肝機能(ALT)が正常(無症候性キャリア)で、血小板数が低下していない患者さんは、肝炎の進行が大変遅いため、インターフェロン治療の必要性が低い場合が多いといわれています。逆に、ALT値が高い慢性C型肝炎の患者さんは、積極的なインターフェロン治療の対象になります。ただし、高齢者や、糖尿病など肝炎以外に疾患のある患者さんは、慎重に治療適応を判断します。
現在インターフェロン治療には、インターフェロン単独による治療方法と、インターフェロンと抗ウイルス効果のある内服薬を併用する方法があります。どの治療方法を選択するかは、先に述べた、肝炎ウイルスの量や、型により判断します。年々新しいインターフェロン製剤や、抗ウイルス薬が開発されており、C型肝炎が完治できる率は、以前に比べ飛躍的に上昇しています。インターフェロン治療によって完治できなかった患者さんは、肝炎の進行を抑える必要があり、肝機能(ALT値)を下げる効果のある内服薬や、注射をしていきます。
7.食事・運動
肝炎の進行度が軽度の患者さんは、特に食事や運動に制限はありません。肝炎が中等度以上に進行していたり、肝機能値(ALT値)が高い患者さんは、激しい運動は避けるべきです。また、飲酒は軽度の肝炎の場合は、1日日本酒1合、またはビール1本程度なら問題ありませんが、中等度以上の肝炎の場合、飲酒は控えるべきです。
※参考文献
慢性肝炎の治療ガイド2006 日本肝臓学会 編
C型肝炎の自己管理 岡上 武 著