「飲むヒアルロン酸は効くのでしょうか?」

 つい先日、女性の外来患者さんから「膝が痛いんよ。○○という薬を取り寄せて飲んでるんやけど治らへんのよ」とのお話。 スタッフに効いてみると最近TVで宣伝しているヒアルロン酸を含んだサプリメントで昔、活躍していた俳優さんがその有効性を演じているとのこと。結構いいお値段だということも教えてくれた。 確かにヒアルロン酸は関節にとって大事な成分です。 関節にヒアルロン酸を補給すると関節が強くなりそうですね。でもヒアルロン酸を痛んでいる関節内に注射するのならわかりますが、のむヒアルロン酸が痛んでいる関節に届くのでしょうか? 答えはノーです。まず第一に服用したヒアルロン酸は腸管で分解されてヒアルロン酸ではなくなってしまいます。ヒアルロン酸の構成成分が吸収されてもそのごく一部しかヒアルロン酸にもどりません。また合成されたヒアルロン酸は障害のある関節にのみ到達するわけではありません。 関節の他、眼や広い範囲の皮膚にも分配されます。つまり患者さんが期待している関節にはわずかしか到達していないことになります。また経口ヒアルロン酸の安全性も確立されていません。以下に国立栄養研究所のコメントをそのまま載せておきます。

 「ヒアルロン酸は、眼の硝子体成分として発見された高分子多糖であり、粘性が高く、動物の結合組織の成分である。皮膚、腱、筋肉、軟骨、脳、血管などの組織中にも広範に分布している。生体内では細胞接着や細胞の移動などを制御していることが知られている。加齢とともに減少することから関節炎などに対する効果、美肌効果などが期待されている。俗に「関節痛を和らげる」「美肌効果がある」といわれているが、経口摂取によるヒトでの有効性については信頼できるデータは見当たらない。ただし、外用で口腔粘膜の炎症の治療に、眼内注射で白内障治療の補助剤として、関節内投与で骨関節炎の治療に有効性が示唆されている。安全性については、外用および非経口で適切に使用する場合はおそらく安全と思われるが、経口摂取の安全性については信頼できる充分なデータがない。特に妊娠中・授乳中の使用は避けるべきである。関節内投与の副作用としてアレルギー反応が起こることがある。」  結論として経口ヒアルロン酸は有効性、安全性からも飛びついて使用すべきものではないでしょう。