スポーツは、子供たちの身体や心が成長していくためにとても大切です。また、中高齢者の方にも、糖尿病や高脂血症、肥満などを予防し、健康を維持するために非常に有効です。しかし、不意なアクシデントにみまわれたり、頑張り過ぎて怪我をすることもあります。

多くの怪我は安静にするだけで、時間と共に痛みは軽減していきます。しかし、競技を再開すると、再び同じ症状が出てくることは少なくありません。怪我をするには原因があります。多くの場合、コンディション不良(身体が硬いなど)や、動作不良(ボールの投げ方が悪いなど)が背景にあります。当院では、痛みが強い間は運動を制限することはありますが、後遺症の残らない怪我の場合は、厳しい制限は致しません。それよりも、怪我に至った原因(コンディション不良、動作不良)を、リハビリテーションで修正し、痛みの出ない身体を作ることに努めます。また、怪我によっては、インソールなどの装具や、体外衝撃波が有効な場合もあります。

しかし、中にはリハビリテーションだけでは解決できず、手術が必要な怪我があります。そのような場合は、専門医により手術を行わせていただきます。また、関節鏡を用いて行える手術も多く、できるだけ身体への負担が少ない方法で行っています。どの手術においても術後のリハビリテーションは大切で、当院では併設のアスレチックジムを併用しながら、安全に競技へ復帰していただける様にサポートしています。

関節鏡視下前十字靭帯再建術

断裂した前十字靭帯は再生能力が低いため、ご自身の他の部位を使って靭帯を作り直す必要があります。手術せずに放置してしまうと、膝が不安定であるため膝崩れが起きたり、半月板や軟骨への負担が増えて傷んでくることがあります。

当院では、膝を伸ばす腱(膝蓋腱)か、膝を曲げる腱(ハムストリングス)を用いて再建をしています。膝蓋腱の特徴は、腱が付着している骨も一部使用するため、より安定した膝になります。部活動などで頑張ってスポーツをしている選手などに適しています。しかし、この方法は膝をつくような動作などで痛みが残ることがあるため、レクリエーションでスポーツをされている方にはハムストリングスを使用した再建が適しています。

入院は2週間を目安にしてください。術後4週間は松葉杖を使用します。また、装具を用いて膝の可動域を調整しながらリハビリテーションを進めます。自転車は術後2ヶ月から、ランニングは術後3ヶ月から、部分的な練習参加は術後6ヶ月から許可します。

再建した靭帯は、術後6~8週で強度が最も低下します。その後、徐々に強度は回復していき、術後9ヶ月で「競技復帰に耐えうる最低限の強度」となり、術後1年~2年かけて「組織学的な成熟期」に到達します。したがって、再断裂を防ぐためには、早すぎる競技復帰は望ましくありません。段階的に運動レベルをアップしていき、筋力が回復し、動作が安定していることを確認して、術後9ヶ月を目安に競技復帰を目指します。しかし、目標とする大会が9ヶ月以内にあるなど、事情によっては早期復帰をご相談します。反対に、早期復帰を必要としない方は、術後1年程度での復帰をお勧めしています。


正常な前十字靭帯

断裂しゆるんだ靭帯
腱を靭帯の様に形成

術後CT:太ももとスネの骨に5~6mm径のトンネルを作成

トンネルの中に靭帯を通して固定

関節鏡視下前十字靭帯再建術後
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関節鏡視下半月板縫合術

半月板は膝のクッションで、膝の軟骨を守る大切な役割があります。競技中に膝を捻ることで受傷しやすく、前十字靭帯断裂に合併することも少なくありません。半月板は血流の良くない組織で、断裂をした場合は手術が必要になることが多いです。損傷の形態によって、縫合できる場合と、部分的に切除する場合があります。切除すると、軟骨が早く磨り減ることがあるため、当院ではできるだけ 縫合するようにしています。

関節鏡を使用するため傷は小さく、身体への負担が少ない手術です。断裂の部位や形態により縫合方法を使い分け(Inside-out 法、Outside-in 法、All-inside 法)、強固に縫合をします。また、治癒しにくい断裂に対しては、ご本人の血液成分(Fibrin clot)を断裂部に充填して治癒を促します。

入院は数日~1週間を目安にしてください。術後3週間はサポーターを使用して、膝を伸ばした状態で固定します。入浴や着替えの際は、適宜外して頂きます。その後、90度までの屈曲を許可し、術後5週以降は可動域をフリーにします。松葉杖の使用は、断裂の形態により期間が異なり、6~8週間となります。自転車は術後2ヶ月から、ランニングは術後3ヶ月から許可します。部分的な練習参加は術後5ヶ月から行い、術後6ヶ月での競技復帰を目指します。


断裂部

縫合後

関節鏡視下半月板縫合術後
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内側膝蓋大腿靭帯再建術

膝を捻ることで、膝蓋骨が膝の外側へ脱臼することがあります。その際、膝蓋骨を安定させている内側膝蓋大腿靭帯が断裂します。スポーツ選手や10歳代と若い方、また、元々の骨の形態によって脱臼を繰り返しやすい方がいます(反復性膝蓋骨脱臼)。初回の脱臼で手術をすることは少ないですが、繰り返す場合は手術を検討します。

まず、関節鏡を用いて、骨軟骨片の有無や膝蓋骨の動きを観察します。外側の組織が硬く膝蓋骨の動きを妨げている場合は、関節鏡視下に硬い組織を切離します。また、靭帯の再建方法には、ご自身の腱を使用する方法と、人工靭帯を使用する方法があり、当院では主に身体への負担が少ない人工靭帯で再建をしています。膝蓋骨と大腿骨に人工靭帯を吸収性のスクリューで固定します。

入院は数日~1週間を目安にしてください。リハビリテーションで脱臼の危険がある動作の修正を行います。ランニングは術後2ヶ月から、部分的な練習参加は術後3ヶ月から行い、術後4ヶ月での競技復帰を目指します。
肩関節脱臼に対する手術

肩の脱臼はクセになる(反復性肩関節脱臼)ことがあります。特に10~20歳代の若い方では、70~80%がクセになると言われています。脱臼する際、多くの場合は肩の靭帯(関節唇)が肩甲骨から剥がれてしまい不安定になります。2回、3回と脱臼を繰り返す場合は手術を検討します。また、ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツでは再脱臼の可能性が高く、初回脱臼でも手術をお勧めします。

手術の方法は、大きく分けて2つあります。

①関節鏡視下関節唇修復術
剥がれた靭帯(関節唇)を、肩甲骨に固定する手術です。
数mm程度の小さな皮膚切開を3 カ所行います。肩甲骨にアンカーという糸を打ち込み、剥がれた靭帯(関節唇)に糸を通して縫合します。アンカーは約4本使用します。
この手術の特徴は、関節鏡を使用するため傷が小さく、身体への負担が少ない事です。可動域の回復も良いため、ボールを投げるなど十分な肩の可動域を必要とする競技ではこの方法を行います。

入院は数日~1週間を目安にしてください。術後3週間は装具固定を行います。また、脱臼する危険のある動作に注意を払いながら、可動域訓練を行います。ランニングは術後2ヶ月から、ダッシュは術後3ヶ月から許可します。部分的な練習参加は術後4ヶ月から行い、術後6ヶ月での競技復帰を目指します。


骨から剥がれた靭帯(関節唇)

骨に糸(アンカー)を打ち込む

糸を靭帯に縫合し骨に固定

関節鏡視下関節唇修復術後
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②烏口突起移行術(+関節鏡視下関節唇修復術)
肩甲骨の一部である烏口突起を先端1cm切離して、関節の前方にスクリューで固定をします。この突起には上腕二頭筋などの筋肉がついており、脱臼を強く制動してくれます。

この手術は肩の前方を切開しますので、①より身体へかかる負担は幾分か大きくなり、可動域はやや低下します。①は脱臼前の状態に戻すことが目標ですので、脱臼した時と同じ力が肩に加わると再脱臼してしまいます。しかし、②の方法は、脱臼前の肩(怪我をする前の肩)より強くなりますので、再脱臼はほとんど起こりません。したがって、再脱臼のリスクが高いコンタクトスポーツでは、この方法が第1選択になります。また、投球などの大きな可動域を必要としない競技であれば、再脱臼の心配がなく思い切ってプレーができるため、この方法を選択することがあります。 移行した骨が癒合するまでの術後3ヶ月間は運動を制限しますが、骨癒合をCTで確認できれば、全ての運動を許可します。つまり①より競技復帰が早いというメリットがあります。

入院は数日~1週間を目安にしてください。術後3週間は装具固定を行います。また、移行した骨に負担をかけないよう注意を払いながら、可動域訓練を行います。ランニングは術後2ヶ月から開始、術後3ヶ月で骨癒合の状態が良ければ全ての運動を許可し、術後4ヶ月で競技復帰を目指します。


関節の前方に烏口突起の先端をスクリューで固定

烏口突起移行術後
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肘離断性骨軟骨炎(外側の野球肘)に対する治療

離断性骨軟骨炎は10~11歳で発症します。外側に痛みが出ることもありますが、内側の痛みでレントゲンを撮影して偶然発見されることもあります。野球選手の約2%に発症します。この怪我は、関節表面の軟骨と、その下層の骨との間に亀裂が生じて起こります。その亀裂を癒合させることが、治療の目標となります。

治療方針は、おおまかに年齢、病巣の大きさ、関節軟骨の状態によって決まります。
その理由としては以下の点が挙げられます。

・幼い時期は(だいたい12歳以下)亀裂が治りやすい
・病巣が10~12mm以下であれば、治り切らなくても大きな問題は残らない
・関節軟骨が劣化すると、亀裂は手術をしないと治らない

具体的な治療の方法について解説していきます。なお、こちらで記載している年齢は、平均的なスピードで成長しているお子様の暦年齢です。実際は骨の年齢で治療方法を決めますので、成長が早い場合や遅い場合は、記載している年齢と違った治療をすることがあります。

①保存療法(手術以外の方法)
12歳以下で、関節軟骨が劣化していなければ、手術をしなくても病巣の縮小が期待できます。3~6ヶ月間、投球やバッティング、腕立て伏せなど、肘に負担のかかる運動を禁止します。軽いランニングや体幹下肢のトレーニング、軽い捕球練習、反対の腕だけでのバットスイングなどは許可しています。また、亀裂を癒合させるために、ギプス固定も有効です。当院では1ヶ月間は完全にギプスで固定し、次の1ヶ月間は入浴やリハビリ時には外せるタイプへ変更、最後の1ヶ月間は外出時のみ固定をするようにしています。また、体外衝撃波も治癒を促すとされており、外せるタイプに変更した段階でご相談します。治療開始から3ヶ月でレントゲンを撮影し、治癒が進んでいれば徐々に投球を再開します。しかし、十分に治癒していない場合は、さらに運動を禁止するか検討します。


初診時

保存療法3ヶ月後



②関節鏡視下関節鼠摘出術、郭清術
関節軟骨が劣化し、病巣が不安定になると痛みが強くなります。病巣が10~12mm 以下と小さい場合は、遊離体(鼠)や不安定な病巣を摘出します。摘出後は病巣に小さな穴を作成し、線維軟骨の再生を促します。

入院は3~4日間を目安にしてください。
この手術の大きなメリットは、小さな傷で行えるため身体へかかる負担が少なく、競技復帰が早いことです。リハビリテーションを行い、術後1ヶ月から徐々に投球を開始して、術後2~3ヶ月で競技復帰を目指します。


関節軟骨は毛羽立って劣化している

病巣を摘出

摘出後



③骨釘固定術(+骨移植)
成⾧軟骨が残っており(おおむね15 歳以下)、病巣が12mm 以上と大きいが、関節軟骨の劣化はまだ軽い場合に検討する術式です。

肘の後ろの部分(肘頭)から、骨を採取します。採取した骨の硬い部分(皮質骨)を太さ2~3mm、長さ15mmに成型します(骨釘と呼びます)。治癒を促すために、病巣の下層に採取した骨の柔らかい部分(海綿骨)を移植します。そして、病巣に骨釘を打ち込み固定します。骨釘は2~3本使用することが多いです。

この手術のメリットは肘だけで手術を完結できることです。④の治療になると、怪我をしていない膝も手術で切開することになりますが、この方法ではその様なことは行いません。また、採取した部分(肘頭)の骨は、術後3ヶ月程度で再生してきます。つまり、失うものはない、ということです。
デメリットは、稀に病巣が治癒しないことがあり、その場合は④の手術を検討することになります。また、すでに関節軟骨が劣化している場合は③の術式ではなく、病巣の大きさにより②または④の手術になります。

入院は数日~1週間を目安にしてください。術後1週間はシーネ固定をして、リハビリテーションを行い、術後3~4ヶ月から徐々に投球を開始、術後4~5ヶ月で競技復帰を目指します。


術前の病巣

軟骨の劣化はなく、骨釘3本で固定

術後3ヶ月で骨釘に固定され病巣は癒合



④骨軟骨柱移植術
病巣が12mm以上と大きく、関節軟骨が劣化している場合に検討する術式です。膝から正常な軟骨と骨を移植し、関節軟骨を再建します。

劣化した関節軟骨と病巣を切除し、膝の重要でない部分(前方の非荷重部)から8mm径前後の骨軟骨柱を採取し、肘の病巣へ移植します。1~3本移植することが多いです。また、関節軟骨が劣化していない部分があれば、③を併用することもあります。

入院は1~2週間を目安にしてください。術後1週間はシーネ固定をして、リハビリテーションを行い、術後4~5ヶ月から徐々に投球を開始、術後5~6ヶ月で競技復帰を目指します。


劣化した関節軟骨を切除し、骨軟骨柱2本を移植

劣化した関節軟骨を切除し、骨軟骨柱1本を移植

肘頭疲労骨折に対する手術

高校生以降で受傷することが多い怪我で、後ろ側の野球肘の一つです。この疲労骨折は治りにくいため、骨折部の治癒再発防止を目的に手術を検討します。小さな皮膚切開からスクリューを2本入れて骨折部を固定します。

この骨折が生じる原因として、肘の外反ストレスが大きく関与しています。手術をすることで再発の危険性を減らす事はできますが、リハビリで不良動作を改善することも重要です。

入院は3~4日間を目安にしてください。リハビリテーションを行い、術後3ヶ月で徐々に投球を開始、術後4ヶ月での競技復帰を目指します。


スクリュー2本で固定し、術後3ヶ月で骨癒合


肘内側側副靱帯再建術

内側側副靭帯損傷は内側の野球肘の一つで、野球肘の中では最も頻度が高い怪我です。治療方法の基本はリハビリテーションなどの保存療法で、2~3ヶ月で良くなることが多いです。しかし、リハビリテーションを行なっても痛みが軽減しない場合は、手術を検討することになります。

まず、前腕にある長掌筋腱を小さい皮膚切開から採取します。次いで、上腕骨と尺骨にそれぞれ4.5mm径のトンネルを作り、二重折りにした長掌筋腱を挿入、4mm径の吸収性スクリューで骨に固定します。

入院は数日~1週間を目安にしてください。術後4週間はギプス固定をします。ランニングは術後1ヶ月から、山なりでの投球は術後4ヶ月から開始し、術後8ヶ月で全力投球を許可します。リハビリテーションを継続し、術後10ヶ月~1年で完全復帰を目指します。

この手術は早くしないと手遅れになるというものではありません。競技復帰には長期間を要するため、手術をする時期をしっかりと相談しましょう。


再建した靭帯

肘内側側副靱帯再建術後
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