肩関節脱臼に対する手術
肩の脱臼はクセになる(反復性肩関節脱臼)ことがあります。特に10~20歳代の若い方では、70~80%がクセになると言われています。脱臼する際、多くの場合は肩の靭帯(関節唇)が肩甲骨から剥がれてしまい不安定になります。2回、3回と脱臼を繰り返す場合は手術を検討します。また、ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツでは再脱臼の可能性が高く、初回脱臼でも手術をお勧めします。
手術の方法は、大きく分けて2つあります。
①関節鏡視下関節唇修復術
剥がれた靭帯(関節唇)を、肩甲骨に固定する手術です。
数mm程度の小さな皮膚切開を3 カ所行います。肩甲骨にアンカーという糸を打ち込み、剥がれた靭帯(関節唇)に糸を通して縫合します。アンカーは約4本使用します。
この手術の特徴は、関節鏡を使用するため傷が小さく、
身体への負担が少ない事です。
可動域の回復も良いため、ボールを投げるなど十分な肩の可動域を必要とする競技ではこの方法を行います。
入院は数日~1週間を目安にしてください。術後3週間は装具固定を行います。また、脱臼する危険のある動作に注意を払いながら、可動域訓練を行います。ランニングは術後2ヶ月から、ダッシュは術後3ヶ月から許可します。部分的な練習参加は術後4ヶ月から行い、術後6ヶ月での競技復帰を目指します。

骨から剥がれた靭帯(関節唇)

骨に糸(アンカー)を打ち込む

糸を靭帯に縫合し骨に固定
関節鏡視下関節唇修復術後
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②烏口突起移行術(+関節鏡視下関節唇修復術)
肩甲骨の一部である烏口突起を先端1cm切離して、関節の前方にスクリューで固定をします。この突起には上腕二頭筋などの筋肉がついており、脱臼を強く制動してくれます。
この手術は肩の前方を切開しますので、①より身体へかかる負担は幾分か大きくなり、可動域はやや低下します。①は脱臼前の状態に戻すことが目標ですので、脱臼した時と同じ力が肩に加わると再脱臼してしまいます。しかし、②の方法は、脱臼前の肩(怪我をする前の肩)より強くなりますので、
再脱臼はほとんど起こりません。したがって、再脱臼のリスクが高いコンタクトスポーツでは、この方法が第1選択になります。また、投球などの大きな可動域を必要としない競技であれば、再脱臼の心配がなく思い切ってプレーができるため、この方法を選択することがあります。
移行した骨が癒合するまでの術後3ヶ月間は運動を制限しますが、骨癒合をCTで確認できれば、全ての運動を許可します。つまり①より
競技復帰が早いというメリットがあります。
入院は数日~1週間を目安にしてください。術後3週間は装具固定を行います。また、移行した骨に負担をかけないよう注意を払いながら、可動域訓練を行います。ランニングは術後2ヶ月から開始、術後3ヶ月で骨癒合の状態が良ければ全ての運動を許可し、術後4ヶ月で競技復帰を目指します。

関節の前方に烏口突起の先端をスクリューで固定
烏口突起移行術後
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肘離断性骨軟骨炎(外側の野球肘)に対する治療
離断性骨軟骨炎は10~11歳で発症します。外側に痛みが出ることもありますが、内側の痛みでレントゲンを撮影して偶然発見されることもあります。野球選手の約2%に発症します。この怪我は、関節表面の軟骨と、その下層の骨との間に亀裂が生じて起こります。その亀裂を癒合させることが、治療の目標となります。
治療方針は、おおまかに年齢、病巣の大きさ、関節軟骨の状態によって決まります。
その理由としては以下の点が挙げられます。
・幼い時期は(だいたい12歳以下)亀裂が治りやすい
・病巣が10~12mm以下であれば、治り切らなくても大きな問題は残らない
・関節軟骨が劣化すると、亀裂は手術をしないと治らない
具体的な治療の方法について解説していきます。なお、こちらで記載している年齢は、平均的なスピードで成長しているお子様の暦年齢です。実際は骨の年齢で治療方法を決めますので、成長が早い場合や遅い場合は、記載している年齢と違った治療をすることがあります。
①保存療法(手術以外の方法)
12歳以下で、関節軟骨が劣化していなければ、手術をしなくても病巣の縮小が期待できます。3~6ヶ月間、投球やバッティング、腕立て伏せなど、肘に負担のかかる
運動を禁止します。軽いランニングや体幹下肢のトレーニング、軽い捕球練習、反対の腕だけでのバットスイングなどは許可しています。また、亀裂を癒合させるために、
ギプス固定も有効です。当院では1ヶ月間は完全にギプスで固定し、次の1ヶ月間は入浴やリハビリ時には外せるタイプへ変更、最後の1ヶ月間は外出時のみ固定をするようにしています。また、
体外衝撃波も治癒を促すとされており、外せるタイプに変更した段階でご相談します。治療開始から3ヶ月でレントゲンを撮影し、治癒が進んでいれば徐々に投球を再開します。しかし、十分に治癒していない場合は、さらに運動を禁止するか検討します。

初診時

保存療法3ヶ月後
②関節鏡視下関節鼠摘出術、郭清術
関節軟骨が劣化し、病巣が不安定になると痛みが強くなります。病巣が10~12mm 以下と小さい場合は、遊離体(鼠)や不安定な病巣を摘出します。摘出後は病巣に小さな穴を作成し、線維軟骨の再生を促します。
入院は3~4日間を目安にしてください。
この手術の大きなメリットは、小さな傷で行えるため身体へかかる負担が少なく、
競技復帰が早いことです。リハビリテーションを行い、術後1ヶ月から徐々に投球を開始して、術後2~3ヶ月で競技復帰を目指します。

関節軟骨は毛羽立って劣化している

病巣を摘出

摘出後
③骨釘固定術(+骨移植)
成⾧軟骨が残っており(おおむね15 歳以下)、病巣が12mm 以上と大きいが、関節軟骨の劣化はまだ軽い場合に検討する術式です。
肘の後ろの部分(肘頭)から、骨を採取します。採取した骨の硬い部分(皮質骨)を太さ2~3mm、長さ15mmに成型します(骨釘と呼びます)。治癒を促すために、病巣の下層に採取した骨の柔らかい部分(海綿骨)を移植します。そして、病巣に骨釘を打ち込み固定します。骨釘は2~3本使用することが多いです。
この手術のメリットは
肘だけで手術を完結できることです。④の治療になると、怪我をしていない膝も手術で切開することになりますが、この方法ではその様なことは行いません。また、採取した部分(肘頭)の骨は、術後3ヶ月程度で再生してきます。つまり、失うものはない、ということです。
デメリットは、稀に病巣が治癒しないことがあり、その場合は④の手術を検討することになります。また、すでに関節軟骨が劣化している場合は③の術式ではなく、病巣の大きさにより②または④の手術になります。
入院は数日~1週間を目安にしてください。術後1週間はシーネ固定をして、リハビリテーションを行い、術後3~4ヶ月から徐々に投球を開始、術後4~5ヶ月で競技復帰を目指します。

術前の病巣

軟骨の劣化はなく、骨釘3本で固定

術後3ヶ月で骨釘に固定され病巣は癒合
④骨軟骨柱移植術
病巣が12mm以上と大きく、関節軟骨が劣化している場合に検討する術式です。膝から正常な軟骨と骨を移植し、関節軟骨を再建します。
劣化した関節軟骨と病巣を切除し、膝の重要でない部分(前方の非荷重部)から8mm径前後の骨軟骨柱を採取し、肘の病巣へ移植します。1~3本移植することが多いです。また、関節軟骨が劣化していない部分があれば、③を併用することもあります。
入院は1~2週間を目安にしてください。術後1週間はシーネ固定をして、リハビリテーションを行い、術後4~5ヶ月から徐々に投球を開始、術後5~6ヶ月で競技復帰を目指します。

劣化した関節軟骨を切除し、骨軟骨柱2本を移植

劣化した関節軟骨を切除し、骨軟骨柱1本を移植